トピックス  No.28 09/04/20

フランス主要都市の上下水道料金

 英国イングランドとウェールズの上下水道料金に引き続き、フランス主要都市(地域圏の圏府)における上下水道料金をご紹介します。

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■料金の体系

 フランスの上下水道事業は、施設の所有権を自治体が保有しており、その運営については直営か、コンセッション、アフェルマージュ、レジ・アンテレッセ(業績連動型委託)、ジェランス(単純委託)といった委託かのいずれかになっています。コンセッション以下の委託の場合でも、料金の決定権限は自治体が留保しているため、委託業者が勝手に改定することはできません。

◆原価の内訳

 料金の設定は、事業単位での独立採算制を原則とし、これに「取水者・排出者負担の原則」に基づく流域管理庁への取水・排水課徴金などの課徴金が加算される仕組みになっています。上下水道料金の原価の内訳をフランス全国平均で見ると、上水道サービス対価が43%、下水道サービス対価が31%(以上で合計74%)、課徴金が20.5%、付加価値税が5.5%となっています。このうち課徴金の20.5%は、流域管理庁への取水・排水課徴金が19%と大半を占めています。

◆基本料金(redevance d'abonnement)と従量料金(consommation)

 基本料金は、メーター使用料で、口径別に設定される場合が多いようです。これとは別に新規申込み時に加入料金が賦課される場合もあります。また従量料金は、水量あたりの単価が設定されており、検針水量×単価で算出されます。


■料金の一覧

 各市の上下水道料金は表-1のとおりです。わが国やイギリスと比較して顕著な違いは、料金体系を明示している都市が少ないことです。詳しい説明がある場合でも、一般家庭に送られる請求明細書のサンプルを掲げて見方を解説しているものもあり、メーター口径別の基本料金や水量区分別の従量料金は、公表資料からはわからないという都市がかなりありました。運営を民間に委託している場合には、委託先の会社(ヴェオリア社やスエズ社など)のホームページにリンクが貼られているだけのものもあります。上下水道サービスを都市圏共同体(la communauté de agglomération)や混成事務組合(syndicat mixte)に委任している場合は、構成自治体それぞれの料金が異なる場合が多いため、それらを原価の内訳を含めて網羅的に表示することは複雑すぎるという配慮もあるのでしょう。

 また、表-1で基本料金、従量料金ともにデータがあった10都市のデータを用いて、1ヶ月あたり10m3使用の場合の月額料金を図化すると、図-1のとおりとなります。同図には、参考として東京都、大阪市、福岡市及び堺市の料金を合わせて表示しました。なお、月10m3としたのは、フランス国内の家庭における水使用量が1人1日あたり160リットル前後というデータから、平均的な2人家族では年間120m3、月平均10m3という物指しがフランスでは一般に使用されているためです。

 表-1を見ると、従量料金は均一の単価となっている都市が多いようですが、上記の理由によりすべての都市の事情は正確にはわかりません。またイギリスで見られるような、大口使用者に対する割引料金の選択制の有無も確認できませんでした。

 また図-1を見ると、フランス各市の料金はわが国よりもかなり高い水準となっています。補助金分の補正も必要ですので単純な比較はできませんが、昨今のユーロ相場の下落も踏まえれば、フランスの上下水道料金は、少なくとも一般家庭の料金水準で見る限り、わが国よりも割高といえるでしょう。

 ここで比較したフランスの諸都市の人口は、パリ市が突出して約220万人、マルセイユ市が約80万人と比較的多いのを除けば、概ね10~40万人程度の規模となっています。都市圏共同体や混成事務組合で広域的に事業を実施している場合があるとはいっても、それによる規模の拡大もそれほど大きなものではありません。むしろ、この程度の都市規模で上下水道事業の独立採算運営を考えるならば、直営や委託の形態の別には関係なく、フランス程度の料金水準はどうしても必要といえるかもしれません。またパリ市の料金は、都市規模から考えると割高といえるでしょう。

 表-1 フランス主要市の上下水道料金表(単位:ユーロ、付加価値税を含まない)

都市名 基本
料金
従量料金(/m3) 備考
上水道 下水道 課徴金
Amiens - - - - 2.18 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Orléans 24.26 1.1795 1.3817 0.6066 3.17 2008年度
Caen - 0.85 0.94 0.00 1.79 基本料金は不明。
Clermont-Ferrand 11.86 0.886 0.780 0.434 2.10 口径15mm
Châlon-en-Champagne 12.34 0.9345 0.9953 0.5918 2.52 口径15mm
Strasbourg - - - - 2.25 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Dijon - - - - 3.15 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Toulouse - 1.33 1.35 0.34 3.02 基本料金は不明。
Nantes - - - - 2.58 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Besançon 18.55 0.860 0.910 0.370 2.14 口径15mm
Poitiers 18.70 1.011 1.210 0.442 2.66 口径15mm
Bordeaux - 0.9964 0.6699 0.9386 2.61 基本料金は不明。
Marseille 51.76 1.7385 0.8822 0.3830 3.00 2009第2四半期
Metz 18.00 0.9373 1.1900 0.7245 2.85 上水道従量料金は年間120m3使用時の加重平均。
Montpellier - 1.11 1.20 0.32 2.63 基本料金は不明。
Lille - - - - 2.93 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Limoges - - - - 2.15 基本料金は含まず。従量料金の内訳は不明。年間120m3使用時の料金単価。
Lyon 32.45 1.0611 0.7964 0.4016 2.26 2009第1四半期
Paris 20.08 1.0083 0.8905 0.8412 2.74 口径15mm
Rouen 26.41 0.6440 1.0304 0.8339 2.51 口径15mm、従量料金は年120m3使用時の加重平均。
Rennes - 1.26 0.69 0.46 2.41 基本料金は不明

 表の注1)基本料金は1年間分。
 表の注2)付加価値税5.5%が別途課税される。 

図-1 月10m3使用の場合の月額上下水道料金
(単位:円、1ユーロ=130円で換算)

     図の注1)東京都は区部の料金である。
     図の注2)東京都、大阪市、福岡市及び堺市は、最小口径の料金で、消費税分
       5%を含む。
     図の注3)堺市は堺・中・東・西・南・北区の料金である。
     図の注4)フランス各市は、付加価値税5.5%を含む。

●トピックスの関連ページ
  英国上下水道事業会社の上下水道料金
  パリ市水道の再公営化
  フランスでは下水道がいかに民間化されているか


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