プロジェクトストーリー

弘前市・樋の口浄水場
更新プロジェクト

青森県・弘前市内で使用する水の約5割を供給している樋の口浄水場は、施設の老朽化によりDBO※方式による全面更新を決定。
2020年1月のプロポーザル(企画・提案)審査を経てNJSを含むコンソーシアム(共同事業体)が受注し、
2026年の運転開始に向けて工事が進んでいます。
※ Design Build Operate:設計、建設、維持・運転管理業務を一括発注する方式

  • 水道本部
    水道3部部長
    M.A

  • 水道本部
    水道3部
    K.N

  • 大阪総合事務所
    プロジェクト
    マネジメント部
    Y.S

総額140億円の
大規模プロジェクトを受注

  • M.A

    樋の口浄水場の更新プロジェクトは、当社の主担当領域である設計が完了し、工事が始まりました。私たちNJSの仕事としては一段落しましたが、コンソーシアムの中心となって提案書をまとめたメンバーで総括をしたいと思います。

  • K.N

    1960年に建造された樋の口浄水場は施設の老朽化に加えて、大規模地震に対する耐震性能や浸水対策が不十分なため、新たな浄水場の建設が喫緊の課題でした。当社はゼネコン、エンジニアリングメーカー、維持管理会社等とコンソーシアムを組んでプロポーザルへ参加しました。浄水場の設計・工事は主に土木、建築、機械、電気に分かれますが、私が担当したのは土木の設計です。

  • Y.S

    私は建築の設計を担当しました。浄水場全体を新設するのも、DBO方式も初めての経験でしたが、予定通りに基本設計をまとめられたのは、M.AさんとK.Nさんのサポートのおかげです。私は弘前市の出身なので、地元の暮らしを支えるインフラに貢献できるのは大きなモチベーションになりました。受注決定後に転勤になって、詳細設計に関われなかったことは少し心残りでしたが、今年のゴールデンウィークに帰省した時に、現場へ行って工事の進捗を見てきました。

  • M.A

    部分的な施設の更新と違って、15年間の施設運用を含む約140億円の大規模なプロジェクトに関わったことは、Y.Sさんにとっていい経験になったと思います。樋の口浄水場は、これからの水インフラを考えるのに象徴的な案件といえるでしょう。

提案の中に
自分のアイデアを生かす喜び

  • M.A

    今回のプロポーザルでは、他の1グループと競合しましたが、私たちの提案が弘前市に高く評価され、受注することができました。二人が提案をまとめるうえで、ポイントになったことについて聞かせてください。

  • K.N

    弘前市の要求水準書(市が求める施設性能等を記載したもの)にもあった耐震性能の向上と水害への対策は、特に注力して検討、提案しました。施設が浸水しても浄水場の機能を確保できるように電気設備を2階に設置し、防水扉を設けるなど数百年に一度の洪水被害にも浄水場が完全な機能不全に陥らないように配慮しています。周辺環境や取水する水質によって浄水処理のプロセスが変わるので、沈澱やろ過などの処理プロセスをどう組み合わせるかを考えるのが設計の難しさであり、面白さです。冬場の降雪や凍結を防ぐために水槽も建屋で囲う必要があるので、建築設計を担当したY.Sさんは大変だったと思います。

  • Y.S

    短期間で12棟の建物を設計しなければならず、大量の情報を処理して整理・把握するのに追われました。私が設計する建物は設備を入れるものなので、電気や機械を担当するエンジニアリングメーカー、建築工事を担当するゼネコンなどコンソーシアム内の企業との調整が欠かせません。さまざまな意見をまとめるのに苦労しましたが、弘前市民が愛する岩木山を見渡せるデッキを設けたいという私のアイデアを実現できたのは、うれしかったですね。

  • M.A

    地元出身者ならではの素晴らしいアイデアだと思いました。自分なりの総意や工夫を生かす機会があることも、こうした提案を作成する面白さです。

先進技術の導入で
コストダウンを実現

  • K.N

    計画・調査・設計の段階からBIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)などの先進技術により、3Dで浄水場施設を構成する土木、建築、機械設備、電気設備のワンモデルを作成したことも評価に繋がったと考えています。コンソーシアム内の工種間で調整する際にも便利ですし、お客様も出来上がりをイメージしやすいというメリットがあります。(動画リンク:https://www.youtube.com/watch?v=gi3AUIQLL8c

  • Y.S

    2次元の平面図だと、ちょっとした修正でも断面図や詳細図も直さないといけませんが、BIMなら一度で済みます。ただ、自分も協力会社の担当の方もBIMに慣れていなかったため、思い描いたイメージを3Dモデル化するのに少し戸惑いました。水道施設は建築、土木、機械設備、電気設備と多くの工種が係るため、他の分野より導入が遅れていますが、水道施設としては先進的なものでした。

  • M.A

    説得力のある提案書を作成するために、ドローンの空撮動画と建設イメージのCGを合成して、インパクトとわかりやすさを追求したことも功を奏したと思います。コンソーシアム内の調整が最も難しかったのは、いかにコストを削減するかでした。施設全体の集約や機械を最小限にするマシンレスによりイニシャルとランニングのコストを下げながら、プラスアルファの付加価値を提供できることが受注の決め手になりました。

  • K.N

    運転開始から15年にわたる施設の維持管理を効率化するために、当社が独自に開発した設備台帳システムを導入するなど、さまざまなアイデアでコストダウンを実現したことが競合案との差別化に繋がったと思います。

水インフラの
未来を担う使命と責任

  • M.A

    樋の口浄水場のプロジェクトで経験したことを通じて、今後業務のなかで取り組んでいきたいことを聞かせてください。

  • K.N

    近年、日本では地震だけでなく集中豪雨や土砂災害、火山噴火などの自然災害が多発しています。災害時でも地域住民の方々に水を届けることができる施設を計画・設計することが私たちの使命であり、責任です。想定外の災害に耐えられるだけの設計には、既成概念にとらわれない柔軟な発想で取り組む必要があります。災害時における被害シナリオの想定や分析を通して施設の弱点を把握し、二重化や冗長性の確保によって機能を継続できる危機耐性の高い施設の設計を目指します。

  • Y.S

    コンソーシアム内でさまざまな企業の方々とアイデアを出し合い、検討を重ねたことは、大きな刺激になりました。このプロジェクトの経験を生かして、いま類似の案件を複数担当しています。今後は、コストだけでなくカーボンニュートラルや省エネ・創エネなど新しい付加価値を生み出す施設の設計を手がけてみたいと考えています。設計担当として社会課題の解決に貢献することが目標です。

  • M.A

    自治体の職員が減り、一方でインフラの老朽化が進むなかで、官民が協業する案件は今後も増えていくでしょう。公共と民間それぞれがWin-Winになる事業を構築していくには、既存のやり方にとらわれず、常に新しい発想をもって業務に取り組んでいく必要があります。BIM・CIM、ドローンといった先進のDX技術を導入することも有効です。今回のプロジェクトでは出番がありませんでしたが、当社には、土木や建築だけでなく機械、電気、環境、情報といった幅広い分野の技術者が所属しており、様々なバックボーンを有する方に活躍の場があります。また、当社には経験の少ない若手でも、希望すればチャンスが与えられるという社風があります。これから入社する方々にも、水インフラの未来を担う仕事に、積極的に参加してほしいと願っています。