トピックス  No.9 07/08/27   最終更新 10/08/10

覆面座談会(第三弾):カーボンファイナンスと上下水道経営(その1)

2007年08月08日 水曜日 15:30~17:00
  出席者:経営工学研究所、経営企画本部、東部支社から ■、●、▲、○、◆

 上下水道施設の投資効率を上げ、官民協働による低コスト経営を行うためには、地球温暖化対策など大きな枠からの発想による部局横断の取組みと自治体の枠をまたぐ広域的な連携が必要です。今回は、そのための共通目標となるキーワード「カーボンファイナンス」について、基本的な情報を整理しました。

新着情報

ご案内

業務実績

トピックス

調査研究

セミナー・掲載記事

研究所紹介

サイトマップ

ENGLISH


お問い合わせ


日本上下水道設計(株)


■カーボンファイナンスとは

■ここ1年ばかり、社外の学識者にも何人か加わっていただいて「2100年の汚水・汚泥処理ビジョン研究会」という勉強会をやってきた。下水道から出る下水汚泥は、水分を絞った状態では有機分に富む廃棄物だから、し尿や浄化槽汚泥はもちろん、農畜産系の廃棄物や食品残渣などと一緒に処理することはごく自然な発想だ。ゴミ焼却場でほかのゴミと下水汚泥を混焼する例もあるけれど、これがどうも今一つ流行らない。下水道は国交省、し尿や浄化槽は環境省、農畜産系は農水省と所管官庁が違って、それぞれに業界ができあがっているので、一緒にやろうといっても逆に警戒されるし、技術面での条件が合わないといったこともある。でもとにかく、行政の枠を超えるような話をするには、なにか共通の努力目標を掲げることが絶対に必要だという議論になった。そういう中で、地球温暖化対策やカーボンファイナンスというのは、下水汚泥と廃棄物の世界を結びつけるキーワードになるし、現時点ではそれしかないんじゃなかろうかと考えてます。

○つい2~3日前、社会資本整備審議会環境部会から「京都議定書目標達成計画の評価・見直しに関する中間とりまとめ」という中間報告書が出ました。その中で、下水道の管渠網と処理施設を活用してバイオマスの回収・再生・供給をしていくべき、と言っているのですが、「地域の関係主体と連携して・・・地域全体の省CO2を推進する」という文言が引っかかりますね。誰がという主語がないんですが、下水道管理者が中心になってやれということなんでしょうかね。

■誰が中心になるにしても、異なる分野を橋渡しして、大きな枠組みを提案することはコンサルタントの仕事になるね。それでは、カーボンファイナンスの制度というところから話を始めましょうか。

▲カーボンファイナンスについては、国内、海外から色々と資料を用意したので、ここで簡単に説明をしますが、詳しくは後で各自読んでおいて下さい。1997年の京都議定書で数値目標が設定されて、それを達成するための三つの仕掛けが作られたことがそもそもの発端です。三つの仕掛けとは、共同実施(JI:Joint Implementation)、クリーン開発メカニズム(CDM:Clean Development Mechanism)、排出権取引で、これが京都メカニズムと呼ばれるものです。京都議定書というのは、いわばやり方を紹介したもので、誰が何をどうするというのは決めていない。具体的にどうするかというのは、色々なプロジェクト運営主体やファイナンスの団体が出てきて、それぞれに実施しています。例えば、世界銀行が運営している炭素基金には、プロトタイプ基金(水力・風力発電や廃棄物等)、コミュニティ開発基金(小規模プロジェクト)、バイオ炭素基金(緑化等によるCO2の吸収)等があって、出資の見返りに炭素クレジットがもらえるという仕組みです。

●発展途上国が経済発展すると、基本的にCO2排出量は増えるはずなので、これは地球温暖化の趣旨からいうとマイナスじゃないだろうか。

▲その点の指摘は確かになされていますが、そもそも南北格差の是正が議論のスタートになっているので、その話はなおざりになっています。炭素取引は、もともと南北格差の是正に地球環境問題を当てはめたという面がある。先進国からの経済援助が、政府間のODAからPFI世界版のような枠組みに変わってきている様子です。

●植民地管理の発想がなければ、このスキームで飯を食うのは難しいんじゃなかろうか。

◆途上国相手の商売では、既成の枠をはみ出すような銀行マンほど業績を上げているように見える。日本人にはなかなか馴染みがない世界であるのは確か。ただ、ヒルズ族などを見ると、日本人も大分変わってきたのかも知れませんがね。

▲とにかく、京都会議で日本は6%の削減が義務づけられた。来年2008年から計測が始まるので、達成できなければ炭素クレジットを買って回らなければならない。それで、色々と新聞でも取り上げられることが多くなったし、それを見越して電力会社、石油会社、商社は2~3年前から動きを活発化させています。2013年からの第二約束期間では、2012年までの第一約束期間で未達成だった分を目標に上乗せしたり、罰金化する計画もあるようです。

○コンサルタント業界では、パシフィックコンサルタンツが早くからこの分野に着眼していて、いわば何周分も先を走っているランナーです。主要な実施マニュアルなどもここが作っているそうですし。

■CDM事業のフィージビリティスタディやCDM事業の認証審査を受けるための計画書作りはコンサルタントの仕事でしょうね。認証機関はというと、いま、指定認証機関(DOE、Designated Operational Entities)に指定されているのは世界で48機関、うち日本からは日本品質保証機構(JQA)、トーマツ審査評価機構(Deloitte-TECO)、日本プラント協会(JCI)、日本能率協会(JMA)といった名前が見える。


■次回の座談会は

■今日は、このテーマの初回ということで基本的な情報の共有ができたと思います。次回からは各自分担に従って各分野の情報を持ち寄って議論したい。

◆ロサンジェルスのB&E Engineersを始め各国の現地子会社も含めて、当社の海外部門(NJS Consultants)とともに情報を集めてみましょう。

■そういえば、平成17年度に国交省で制度化された「高度処理共同負担事業」は、下水の高度処理をしなければならない自治体間で、できる自治体Aができない自治体B分の汚濁負荷量相当を余分に除去できる施設を造ると、自治体Bの肩代り分を含めた補助金がもらえる、自治体Bは自治体Aに相応の負担金を払うが、自前で造るよりは安くすむというもので、いわば汚濁負荷排出枠の相互取引制度です。面白い制度ですが、残念ながら手を上げる自治体があまりないようだ。また、都道府県が市町村界をまたがって広域的に雨水施設を整備できる「雨水流域下水道」という制度もできているが、これもなかなか進んでいない。バイオソリッド利活用基本計画というのもあるが、実情は同じと聞いてます。これら広域的な取組みを後押しする政策が国から打ち出されているのに、自治体ではなぜ進まないかを検証することも役立つでしょうね。

【トピックス: 覆面座談会(第四弾):カーボンファイナンスと上下水道経営(その2) に続く】


トピックスに戻る