トピックス  No.26 09/02/24

下水道事業への民間活力導入の適性判定指標(SPI)による市町村ランキング(H18年度版)

 民間活力を必要とする自治体の逼迫度と採算性を求める民間のニーズの両面から、下水道事業における民間活力導入の適性を自治体ごとに評価する「下水道民活導入適性判定指標」(SPI : Sewerage service Pro-privatization Indicator)については、既に平成17年度決算版を掲載しています。今回は、使い勝手向上の観点から指標の一部を見直した上で、平成18年度決算の統計データを用いたSPIの算出結果を公表します。

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■SPI(Sewerage service Pro-privatization Indicator)とは

 下水道民活導入適性判定指標(SPI : Sewerage service Pro-privatization Indicatorの略)とは、下水道事業における民間活力導入の適性を各自治体ごとに評価するための指標群として提案するものです。下水道事業の民間委託の度合いを強めてコスト削減を図るという自治体側の緊急度と、民間企業が受託業務をビジネスとして成り立たせうる可能性の両面から、複数の指標を組み合わせて評価します。

 自治体側の逼迫度は、財政への影響度で評価し、これは実質公債費比率のほか、下水道事業会計と国民健康保険会計、老人保健医療会計及び介護保険会計の収支不足額が一般会計に及ぼす影響を指標値として設定しました。このうち国民健康保険会計、老人保健医療会計及び介護保険会計は、多くの自治体で一般会計から多額の繰り出しを行っていることから、下水道事業会計と資金を取り合う「ライバル」の代表として選定したものです。例えば、下水道事業会計に対する一般会計の繰出金がそれほど多額ではなくても、国民健康保険会計等の他の特別会計に多額の繰出金が必要であれば、一般会計側の財政的余力が小さいことから、下水道事業会計への繰出金を削減するニーズは大きいと判断できます。

 一方、民間側のビジネスとして成立する条件は、住民の負担能力(高齢化率が低いほど使用料等の負担能力が高いと考えられるため良いと評価)、債務の償還可能年数(現在の使用料による債務の償還可能年数が短いほど良いと評価)、整備の経済性(下水道施設の整備効率が高いほど良いと評価)の三つの側面から評価します。これら三つの側面は、事業の採算性に直結する項目です。

 これらを整理すると下図のとおりです。SPIは、各指標ごとに偏差値を算出し、それを単純に合計することによって得られます。

 


■SPIの算出方法

 各指標を算出するための数値は、平成18年度市町村決算状況調(総務省)、平成18年度地方公営企業年鑑(総務省)、平成18年度市町村財政状況等一覧表(総務省)及び市区町村別将来人口推計(平成15年12月推計、国立社会保障・人口問題研究所)の各データを用いました。

 各指標の偏差値は、公共下水道、特定環境保全公共下水道又は農業集落排水事業の全体計画を持つ市町村の中から1,414の市町村を母集団として算出してあります。全体計画を持っている市町村でも、データの欠落によりSPIの数値が算出できないもの、また後述するように企業債残高対年間使用料収入比が100を超えるものについては、算出対象外として母集団から外しました。

 各指標の偏差値は平均が50であるため、全ての指標が平均点であればSPIは300となります。また、SPIが最も低い自治体は218.2点、最も高い自治体は692.0点となりました。

 各指標の詳しい説明は次のとおりです。

  • 実質公債費比率(市町村財政への影響度): 一般会計だけでなく公営企業会計の元利償還金への繰り出しや、一部事務組合の公債費の負担金等を含めた、自治体全体の実質的な公債費負担の程度を表します。実質公債費比率が18%以上で起債許可、25%以上で一般単独事業に係る地方債が制限、35%以上で一般公共事業に係る一部の地方債も制限されます。実質公債費比率が18%以上となる市町村については値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値も高くなるよう計算しています。
  • 下水道会計への繰出率(市町村財政への影響度): 一般会計から下水道事業特別会計に繰り出している繰出金が標準財政規模に占める割合です。標準財政規模とは、普通交付税を含めた自治体一般財源収入の見込み額で、総務省により毎年算出される数値です。この指標値が10.0%以上の市町村は値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値も高くなるよう計算しています。
  • 国民健康保険会計等への繰出率(市町村財政への影響度): 一般会計から国民健康保険事業、老人保健医療事業及び介護保険事業の各特別会計に繰り出している繰出金の合計額が標準財政規模に占める割合です。国民健康保険会計等は、多くの自治体で累積赤字を抱えており、下水道事業会計と並んで一般会計からの繰出金が大きい場合が多く見られます。この指標値が15.0%以上の市町村は値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値も高くなるよう計算しています。
  • 2030年老年人口比率(住民の負担能力): 2030年の将来推計人口に占める老年人口(65歳以上)の割合です。この割合が極端に高い場合は、整備後の接続率の伸びが期待できなかったり、受益者負担金、下水道使用料、租税(一般会計繰出金)等の負担能力に問題が生じる可能性があります。この指標値が1/3(33.3%)以上となる市町村は値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値が低くなるよう計算しています。
  • 企業債残高対年間使用料収入比(債務の償還可能年数): 公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水事業会計における企業債現在高を各事業における現在の年間使用料収入の合計額で割った値で、現在の使用料収入を維持管理費に充てることなく、全て起債元金償還に充てた場合に何年で償還が完了するかを意味しています。
     なお、供用開始後間もない時期で需要の立ち上がりが悪い市町村では、この値が極端に高くなる場合があります。これを含めて計算すると、各市町村の偏差値にほとんど差が出なくなることから、比が100を超える市町村については異常値扱いとしてSPI自体の計算対象から外しています。また、算出に用いた企業債の現在高には税金で償還すべき雨水分や汚水公費分が含まれていますので、実際に使用料で償還すべき残高よりは大きめの値であることに留意する必要があります。この指標値が50年を超える市町村は値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値が低くなるよう計算しています。
  • 整備済区域内人口密度(整備の経済性): 公共下水道、特定環境保全公共下水道及び農業集落排水事業による現在処理区域内人口が現在処理区域面積に占める人口密度で、整備の効率性を示します。特定環境保全公共下水道事業の採択要件の一つが40人/ha以上(計画値)とされていることを踏まえ、この指標値が40人/ha未満の市町村については値を赤字としてあるほか、大きいほど偏差値が高くなるよう計算しています。

■SPIの市町村ランキング

 SPIによる地方別・市町村別のランキングは、PDFファイルで掲示しています。下のリンクからご覧ください。全国のデータや都道府県ごとの集計など、より詳しい内容については別途お問い合わせ下さい。


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