トピックス  No.7 07/04/17

市町村合併後における水道料金の統一状況

 上水道、簡易水道、広域水道といった事業形態や事業主体の区分のほか、用途別、口径別、定額制といった体系、基本水量・基本料金・従量料金の水準に相違がある場合は、市町村合併に際した水道料金の調整は容易ではありません。住民に対する同じサービスの対価に差別的取り扱いを設けることは適切ではなく、合理的な理由がない限りはできるだけ速やかな統一が望まれるところです。
 経営工学研究所では、今後水道の料金の統一に向けた見直しを予定されている事業体のご参考に供するため、平成大合併後の水道料金について調整の状況をレビューしました。

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■市町村合併後の水道料金設定の考え方

行政サービスの一環として水道事業をとらえれば、水道水供給サービスの対価である水道料金には、同一のサービスである限り、行政区域内で差を設けず同一とすべきです。これに対し、水道供給契約の法的性格、公営企業としての独立採算原則、水道法の事業認可制度の観点からは、以下のとおり、地区や事業ごとに料金を設定することにも相応の妥当性があります。各自治体の置かれた条件を勘案して政策判断をすべきといえるでしょう。

 まず、水道料金に係る債権の消滅時効を2年とした平成15年の最高裁の決定は、「水道供給事業者としての地方公共団体の地位は、一般私企業のそれと特に異なるものではないから、需要者との水道供給契約は私法上の契約であると解される。また、水道供給契約によって供給される水は、民法第173条第1号に定める『生産物、卸売商人及び小売商人が売却したる産物及び商品』に含まれる」としています。まとまった規模の上水道と山間部に点在するような簡易水道とでは給水原価も当然異なります。このため、各地区や事業を単位として各々の原価に見合った料金を設定することも、住民の合意が得られることを前提とすれば一つの合理的な考え方といえます。


  また、地方公営企業として水道事業を見ると、上水道事業は地方公営企業法の全部適用が強制されており、簡易水道事業は任意適用とされています。また会計上は上水道事業、簡易水道事業ごとに特別会計を設置し、それぞれ独立した形で経理されます (ただし簡易水道が全部適用の場合は一事業として経理可能)。特に簡易水道が地方公営企業法を適用せず官庁会計方式で経理されている場合は、同じ水道とはいえ上水道と簡易水道では原価の構成も異なるため、料金の調整は非常に困難です。このため、市町村合併後の料金統一に当たっては、法非適用で残っている簡易水道事業を企業会計に移行することが必須であり、その上で簡易水道を上水道事業に統合するなどして特別会計を一本化することが望ましい方法です。

  一方、水道法上の事業認可は、地区単位で料金を含めて取得するため、同じ市町村であっても事業認可が異なれば料金が異なることも許容されます。このため水道法から見ても、市町村合併後には、複数ある既存の事業認可を一本化し、施設又は経営の統合を行うことが料金の統一を図るための最もスムーズな方法となります。複数ある簡易水道同士、また簡易水道と上水道とを事業統合し、経営、管理、料金の一元化・統一を図り、さらには施設の管理や事業運営を包括的に民間に委託することは、技術職員や予算確保の困難性が増す中で、給水サービスの維持向上、コストの縮減の観点から極めて有効な手段です。


  経営工学研究所では、平成の大合併がほぼ一巡した現在、全国の自治体で水道料金が実際にどのように調整されているのかを改めて調査しましたので、その概要をご報告します。調査には、合併時の合併協定書、合併後の条例を主なデータソースとして使用しています。なお、水道の使用に伴う使用者の金銭負担としては、いわゆる水道料金以外に加入負担金、開発者負担金(協力金)、量水器(メーター)使用料がありますが、ここでは水道料金に的を絞っています。


■調査の結果

集計の結果の概略は次の通りです。

  • 平成の市町村大合併のうち、水道料金の統一を必要としている(合併前に複数の料金体系があった)ものは443でした。
  • 水道料金を「合併時に統一」した自治体は、上記443の26%にあたる116団体です。統一料金体系を設定したが調整の経過措置を設けている場合はこれにはカウントせず「当面統一しない」に分類していますが、団体数は若干数です。
  • 「統一しない」選択を行った自治体は、上記443のうち14%にあたる64団体です。この中には、合併協定の内容がWeb上で公表されていないため確認できないが、実際には「当面統一しない」措置であるものも若干数含まれている可能性があります。
  • 「当面統一しない」は上記443の59%にあたる263団体。上水道、簡易水道など事業ごとに料金を統一したが、両者の調整は今後という団体も含まれています。この263団体のうち既に統一が終わっているところは13%(自治体数として34団体)にすぎません。統一の予定時期が平成20年度以降であるものは42%、時期が未定であるものも42%、これらの自治体数の合計は221となりました。この中には統一料金を設定済みで経過措置を設けている団体も含まれてはいるものの、多くの事業体で水道料金の統一が「先のこと」として残されています。

 都道府県別、また各都道府県市町村別の集計結果は、PDFファイルで掲示しています。下のリンクからご覧ください。より詳しい内容についてはお問い合わせ下さい。

 なおNJSグループでは、市町村合併後の水道ビジョン(整備・管理の基本構想)、経営計画(料金施策検討や簡易水道の法適化に向けた資産調査を含む)、施設アセットマネジメント計画の策定支援のほか、水道事業の包括的委託業務(施設の維持管理に水道料金徴収、会計処理等の事務代行を含む)の受託を行っております。ぜひご用命下さいませ。(経営関連業務の受託実績はこちら
をどうぞ)

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