トピックス  No.5 07/03/09

市町村合併後における下水道使用料の統一状況

 合併後の市町村の中では、例え複数の処理区や事業があっても、下水道使用料に差を残すことは適当ではありません。とはいえ、今後とも続く財政難の中で下水道事業をどう経営していくのか、節水が進む中で基本使用料や基本使用量、従量制をどう考えていくべきか、またそれらを住民にどう理解してもらうかなど、使用料の統一に向けた検討課題は非常に大きいと思われます。
 経営工学研究所では、今後下水道の使用料の統一に向けた調整を予定されている公共団体様の参考に供するため、平成大合併後の下水道使用料について見直しの状況をレビューしました。

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■市町村合併後の下水道使用料設定の考え方

使用料、手数料等の取り扱いは市町村合併時の合併協定の一つになっています。このうち水道料金と下水道使用料は、総務省の「市町村合併法定協議会運営マニュアル」(平成18年9月)でも、「住民生活に極めて密接に関係し、かつ重要なものであるため・・・住民の生活に影響を及ぼさないよう、十分に新市町村における上・下水道事業の運営について検討し、制度の効率的な運用と円滑な統一について調整することが適当」とされています。

 下水道の使用は、公衆衛生を確保する観点から下水道の供用開始区域内では義務となっています。下水道使用料は、下水道管理者が提供する下水道サービスに対する対価であり、その限りでは水道料金と変わりはありません。しかし、この接続義務(使用の強制)によって税金と同じ性格を帯びることから、同じ市町村で同じ下水道サービスを受けるのであれば、下水道使用料には地区による差を設けず同一とすべきです。

 現実には、汚水処理原価を使用料単価で賄うことが当分難しく、回収できない分は多額の一般会計繰出金で補填している現状から、事業の採算性よりも公共料金としての配慮を優先して、使用料を統一しないとか、当面の措置として合併前の使用料に据え置くとか、統一する場合でも高いところと低いところの中間レベルに設定するといった例が見られます。当面の措置として合併前の使用料に据え置いた場合には、統一に向けて調整という課題に取り組まなければなりませんが、事業の将来的な採算性の考え方を整理して具体の経営計画を策定することはもちろんのこと、基本使用量や基本使用料、逓増制のあり方、また従量制と人頭制が混在している場合の調整方法、またそれらを住民や議会に説明する方法等、なかなか容易ではありません。ただ、これらの検討には先進自治体の事例は大いに参考になるものと考えられます。

 市町村合併に際しての使用料や手数料の調整状況を追った報告には、「市町村合併が公共料金に与える影響の実態分析調査報告書」(内閣府委託調査、平成17年3月、関西情報・産業活性化センター)がありますが、サンプル数が限られており、全国にわたって網羅的に調査した例は意外にも報告されていません。

 経営工学研究所では、平成の大合併がほぼ一巡した現在、全国の自治体で下水道使用料が実際にどのように調整されているのかを改めて調査しましたので、その概要をご報告します。調査には、合併時の合併協定書、合併後の下水道条例を主なデータソースとして使用しています。


■調査の結果

集計の結果の概略は次の通りです。

  • 平成の大合併市町村のうち、公共下水道の供用開始済みは415、このうち下水道使用料の統一を必要としている(合併前に複数の使用料体系があった)自治体は358でした。
  • 下水道使用料を「合併時に統一」した自治体は、上記の358自治体の38%にあたる135団体。都道府県別に見ると、全ての合併市町村が合併時に統一しているところは神奈川県(11団体)、愛知県(3団体)、奈良県(3団体)、香川県(7団体)です。
  • 「当面統一しない」は上記の358自治体の57%にあたる203団体。このうち既に統一が終わっているところは9%(自治体数として19団体)にすぎません。統一の予定時期が平成20年度以降であるものは37%、未定であるものは45%で、これを合わせると83%となり、多くの市町村で下水道使用料の統一が「先のこと」として残されています。

 都道府県別、また各都道府県市町村別の集計結果は、PDFファイルで掲示しています。下のリンクからご覧ください。合併前の使用料など、より詳しい内容については別途お問い合わせください。

 NJSグループでは、市町村合併後の下水道基本構想や基本計画の見直し、事業認可変更はもとより、経営計画(使用料改定支援を含む)の策定、使用料の徴収事務や複式簿記による財務会計処理事務の代行業務サービスを実施しています。ぜひご用命下さいませ。(業務受託実績は
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