トピックス  No.1 06/02/17 最終更新:08/12/15

覆面座談会(第一弾):市場化テスト法案と上下水道界への影響

2006年02月13日 月曜日 15:00~18:30
  出席者:経営工学研究所 ●、■、▲、◆

 市場化テストは、官民の競争を促進することで公共サービスの向上を図ろうとするもの。2006年2月10日に法案が提出されるなど、本格実施に向けて取り組みが進められています。この市場化テスト法案の内容や上下水道界への影響について考察を加えました。

新着情報

ご案内

業務実績

トピックス

調査研究

セミナー・掲載記事

研究所紹介

サイトマップ

ENGLISH


お問い合わせ


日本上下水道設計(株)


■市場化テスト法案の内容

● ちょうどタイムリーに市場化テスト法案ができたようだが、そもそも市場化テストとは何かを押さえておこうか。

■ 市場化テストとは、役所の仕事を役所と民間が同じ土俵で入札し、価格と質で最も優れた者を落札者として決定する方法だ。官の世界に競争原理を導入し、サービスの質の維持向上とコストの削減を図ることが目的で、その手段として民でできるものは民へという役割分担の見直しが市場化テストといえる。英語では"Compulsory Competitive Tendering"(強制競争入札)とか"Managed Competition"とか呼ばれていて、イギリス、アメリカ、オーストラリアで実施例がある。アメリカでは上下水道処理施設の管理を市場化テストにかけて民間が実施している例がある。

◆ 市場化テストの国内導入は、平成16年4月に小泉総理の諮問機関として内閣府に設置された「規制改革・民間開放推進会議」が言い始めたものです。この会議の前身は、小泉内閣の発足と同時に平成13年4月から平成16年3月まで設置された「総合規制改革会議」というもので、委員長はどちらもオリックスの宮内会長。平成17年度にはハローワーク、社会保険庁関連、行刑施設がモデル事業として実施されています。

● 法案の正式名称は?またこれは国会に提出されたのか。

◆ 「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案」というのが正式名称で、閣議決定を経て2月10日に国会に提出されたばかりです。

● この法律の大枠はどうなっているだろう。法律案の要綱を見るとわかりやすいと思うが。

◆ 国又は自治体が実施する公共サービスを自ら見直して、自らやる必要のないものは廃止し、民間の創意・工夫が期待できるものは官民競争入札又は民間競争入札に付すということがまず第一。国の事業については第7条で基本方針を定めることになっていて、これは第37条の「官民競争入札等監理委員会」という内閣府に置かれる評価機関が審議します。地方の事業については第8条で首長が実施方針を作成しますが、審議会など合議制の機関を条例で設置する(第47条)のと民間事業者の意見を聴く必要がある。ただ、全ての自治体が実施方針を作成しなければならないわけではなく、やろうとする自治体はこの手続きでどうぞ、ということですね。

● 対象とする事業はどのように規定されてる?

◆ 今年度モデル事業でやっている社会保険関連事務やハローワークのほか、自治体では住民票や戸籍謄本等の窓口業務はすぐにでもできることになっています。ただこれは法律なので、国の事業については細かく書いているが、地方の事業については、国としては、第32条以下の特定公共サービスに順次追加していき、また環境の整備に努める、またそれらの計画を国の基本方針の中に位置づけるという風になっています。

● 地方分権の流れからして当然そうなるだろうね。要は、対象とする事業や実施主体は後で決めるということかな。最近成立した法律に共通する傾向だが、「誰それが何をどうする」とは書いていなくて、基本方針を決めて委員会で、みたいな感じで、手続きだけが決まってるような法律になっている。PFI法もそうだった。

■ 平成16年に市場化テストの導入が答申された時は、すべての官業を全部対象にするような雰囲気だったが、まずは現実的なところから着手していく形に落ち着いたようだね。上下水道事業がすぐにでも市場化テストの対象にされるような規定はない。まず国の基本方針の中に特定公共サービスとして位置づけてもらわなければ、市場化テストの対象にならない。

● 特定公共サービスの定義は、第2条第5項で「国民に対するサービスの提供その他の公共の利益の増進に資する業務で、法律の特例が適用されるものとしてその範囲が定められているもの」といっている。随分広い概念だが、この法案にあがっているのがさし当たり社会保険などの3業務ということだね。

■ 特定公共サービスの興味深い点は、特例という位置付けでかなりどんな枠組みもできることだ。根拠法を変えることなく特例として規制を飛び越えてしまう、特区みたいな規定になっている。

▲ この定義だと、極論すれば公共の仕事は全部対象になるんじゃないですか。

■ 「その範囲が定められているもの」とあるので、事業の全体を丸ごと対象にするとは限らないよ。


■業界にとってビジネスチャンスとなりうるか

● この法案では、民間が自治体に強くアピールし、自治体がその気になって国にアピールしないと国の基本方針に取り上げてもらえない。民間や自治体から意見が出なければだめだ。事業体の担当者が自ら市場化テストをやろうと言い出すことはないだろうし、民間側も顧客である事業体が嫌がることを進んで言い立てるのは抵抗感がある。「こういう風に法律が決まりましたから何かやりませんか」みたいな感覚で営業する話ではない。
 誰が推進役を努めるかが問題だ。下手をするとこの3サービスで終わりというパターンもありうる。各方面からにらまれても、自分たちでやる、仕掛ける意識がある、そういった人が出てくるかどうかということだよ。

■ 内閣府に提案すれば、自治体側に実際にニーズがあるかを聞いてくる。我々としては、将来市場化テストにビジネスの魅力を感じるのであれば、首長レベルでの自治体のニーズを掘り起こすことが必要だ。

● 市場化テスト法は業界にとってビジネスチャンスになるかどうか、どう思う?

▲ まずは、モデル事業の実績を法律で認定していく形でしょう。今のところの一般的な感覚では上下水道に適用しようなんてことは誰も考えてないように見えます。積極的にやっていきたいという人はあんまりいないでしょうね。
 ただ、市場化テストそのものは、民間にやらせることが目的ではなく、市場化テストという競争によってコストが縮減できればいい。だから、事業体を対象として、市場化テスト必勝法!!みたいなコンサルティングのサービスはありじゃないかな。そもそも、現在事業をやってる事業体の方が、サービス内容を熟知してるに決まってますし、インフラのウェイトの大きい上下水道の場合、業務改善の努力について真剣に取り組みさえすれば、市場化テストでも勝てると思うんですけど。

■ そういうコンサルティングは、ビジネスとしてあまりリターンが期待できないのがつらいところだけどね。それに、下水道なんかでは民間委託が進んでいて任せっきりというところも多いので、市場化テストをして役所が勝つとは限らない。

● 下水道で、民間委託が多くて職員の数があまりいないのであれば、市場化テストに関する提案をしたら即塩撒いて追い返される、というような話でもない。大都市の水道とか職員のたくさんいるところは大変だが。

▲ ファイアウォールとかの細かい手続きは法案に書いてないから、その辺を研究しておけばノウハウになるでしょう。海外などでそれなりに先行事例はあるし、その資料も確保してますからね。

◆ 海外の例では、選考チームと入札準備チームはそれぞれ独立にコンサルタントを雇っているようですね。

▲ あと、情報開示の内容は大きなポイントだろうね。一旦競争プロセスに入ったら役所側と意見交換ができなくなる。PFIの場合の経験から言って、提案書の検討を始めてからの軌道修正とかが出てくる可能性が高いが、これがずいぶん難しくなる。データを持っているところと競争するのは、競争をフェアにやるという視点で考えれば大変難しいのではないですかね。


■職員の身分取扱いはどうなるか

■ 官民競争入札を行う場合、職員の身分取扱いは重大な問題だよね。市場化テストとは直接関係しないが、上水道事業は地方独立行政法人になれる。まだ実例はないと思うが、地方独立行政法人に移行することで市場化テストと同じような効果が得られないだろうか。地方公営企業と比べた公営企業型地方独立行政法人の特徴は次のようなものだ。

  • 地方自治体とは別の法人格となる
  • 毎年の予算・決算に議会は関与しないが、3~5年の中期目標策定時とその終了時に厳しくチェックされる
  • 公営企業型は、公務員型と非公務員型どちらにしろとも書いていないが、総務省の研究会報告書では一律非公務員型とすることが適当との意見が多かったと書いてある
  • 料金は中期計画に盛り込む必要があるので、勝手に設定できない
  • 出資は地方公共団体に限る。民間は出資できない
  • 長期借り入れと債券発行ができない
  • 移行前の債務を引き続き負担する必要がある

● 第三セクターであれば一度出向して戻ることができる。独立行政法人の場合は、非公務員型だと移行したら戻れない。派遣法(公益的法人等への一般職の地方公務員の派遣等に関する法律)がなかったころ(法が施行された平成14年4月1日より前)は、雇用上は退職にしていながら、年金などは通算にしてバランスをとっていた。

● 非公務員型にして、事業を完全に切り離すなら相応の意味はありそうだね。ただ、公務員型というのはどうも何のメリットもない。極論すれば、論ずるに足らずと言ってしまってもいいような、中途半端なスキームだね。公営企業では、公務員型の独立行政法人化というのは、メリットもないし、ありえないのではないか?
 そもそも民間になりたくないからいろいろな横槍が入って、本当は非公務員型でないといけないところを、公務員型という逃げ道を作ったともいえるね。

▲ あいかわらず手厳しいですね(-_-;)...前から気になってるんですけど、なんで公務員でありたがるんでしょうかね。経験上、そこまで居心地がいいとも思えないですけど。

● 役所は法律でこれをやれという風に細かいところまで決まってて自由度がないし、事務分掌に外れたことをやるだけでも覚悟がいる。水道と下水道を一緒にとか、下水道と浄化槽を一緒にとかいうと、首にはならないが勤務評価にひびいたりする。それに対して民間は自由度があり、意義を説明できさえすれば新しい発想で色々なことができる。まあ、人それぞれの考え方があるだろうが、私は民間の方がいいと思うね。

▲ 逆に、こうやってみると、官サービスに民間のいいところを移植しようとするスキームの中でも、公営企業の制度は結構良くできている気がする。

● 第三セクターのように官と民が共同出資することは前からあったわけだが、全般にマネージメントが悪く、ガバナンスが役所なんでだめな例が多い。PFIでもジョイントベンチャー型があるが、これは、いわゆる第三セクターにならないために、「出し切り制度」といって、役所が最初に金を出して後は面倒は見ない制度とすることが要求されている。赤字が出ても面倒見ない。役所に債務保証を求めないのであればそれでいい。ただ、親元の保証がないと銀行が金を貸さないのは困ったもんだね。

● 民営化とかの話は、役所の担当者と話をする限りは、利害関係が対立するので提案が難しい。公務員は民間会社なんかにはなりたくないのが本音だからね。
 逆に、民間委託に対しては結構前向きな例が多いのは、自分たちの利害と対立しないからでしょう。

■ そういえば、ヴェオリア・ウォータージャパンのローラン社長(当時)との対談(日本水道新聞平成17年9月26日号に掲載)で、自治体と民間が共同出資の会社を設立することで、公務員の身分を保持したまま民間に移行できるといった話があったが、それは第三セクターのこと?

● ベルリン市の例だね。15年間は市が身分保証をするが、最終的には転籍する形だったと思う。ただ、これが日本に適用できるかはわからない。
 法案の第48条は配置転換の規定だね。このような規定が盛り込まれているところをみると、今回の法案はだいぶ抵抗勢力に配慮しているようだね。


■市場化テスト法のメリットは

● そもそも、この法案がないと、自治体が市場化テストをできないということはないんじゃないか。
 例えば、第30条で国の債務負担行為を10年までとしているが、財政法で5年と決まっている。国にとってはこの法律がないと長期の債務負担行為が設定できないので意味がある。PFI法も同様で、30年までの債務負担行為を可能にしている。(編注:債務負担行為とは、簡単にいえば、複数年契約により将来の一定期間、一定限度の支出負担を伴うことを予算で決めておく制度をいう。)
 ただ自治体の債務負担行為は、地方自治法で期間の制限がないので、この法律がなくても長期契約は可能だ。国にとっては必要でも、自治体にとっては雰囲気作りみたいなもので、現在でもやろうと思えばいつでもできる。
 PFI事業でも、PFI法に基づくことなく「PFI法に準じて」同じ手続きをやっている自治体がある。長期契約はもともとできたのだし、PFI法ができる前でも自治体がBOT事業をできたんじゃないだろうか。
 第31条の退職金に関する規定も、国家公務員のことで地方公務員は対象外だ。多分各自治体が条例で決めていることだから、必要なら条例で決めろということだろうね。地方公務員の身分取扱い等について、地方公務員法などの法律がネックになって市場化テストに踏み切れないのであれば、この法律に書き込むだろう。

● 下水道法やら水道法やらの現行法が制約になって市場化テストができないということは本当のところあるだろうか?たとえば、非常に悪い水質を出した工場に対して、民間が監督処分や罰金をすることはできないが、さっきの特定公共サービスの定義によれば、そういう行政行為の部分を除いて市場化テストにかけることもできるようだ。通常の民間委託に際して、役所側も入札する側に回ればいいというだけのことではないかな。
 特定公共サービスで定める範囲以外のところは市場化テストの対象外にしてしまえるのなら、包括委託と変わらないんじゃないの?法律の特例が適用されるといっても、現状で包括委託ができるのだからそれではだめなのか?

■ 市場化テスト法は内閣府が所管だから、客観的な立場で特例が設定できるということはないですかね。

● 内閣府主導といっても、そりゃ一緒だよ。どうせ事業の所管省庁には話をするんだから。国交省などは自分たちの法律で改正したがる。汚水処理施設交付金なんかでただでさえ内閣府に主導権をとられがちなので、我々でやります、となる。

■ 行政行為は官しかできないが、これは一つ一つはそう大きな業務量ではないので、あまり気にしなくてもいいはずだ。ただ、包括委託はあくまでも維持管理なので、設計・建設を含めるとこれはまた別問題だ。(編注:行政行為とは、監督処分や罰金徴収等、特定の国民の権利義務を一方的に決定する行為。特定人の法的地位に変動を及ぼさない、施設の管理や清掃業務等は、事実行為と呼び行政行為と区分する。)

■ 特定公共サービスに指定されれば、下水道法や浄化槽法の縛りを超えて、今の法律の枠組みにこだわらない形での事業展開の可能性が開ける。下水道と浄化槽はもっと近いものであるべきだが、省庁の壁は結構厚い。

▲ まずは雰囲気づくりということですかね。現在、試行的に特定されている業務は、なんとなく、以前不祥事があった事業とかが中心になってるような気がします。多分、問題を起こしたために手をつけやすく、ソフト業務が中心で、工夫によって効果が出そうな事業を選んでる感じがします。

▲ このような制度をきっかけに民営の水道が広がる可能性はどうでしょうか。

● 事業認可を外れた地域で、市町村長がやっていいといえば、民営も可能だろうね。現在公営のところの民営化は、可能だが直ぐには進まないかな。現実に役所ができないところが出てきたらあるかもしれない。

■ 東京都の「行財政改革の新たな指針」などを見ると、ずいぶんいろいろ考えているようですが...下水道も水道も4~5年先には職員数が激減する。こうなったらどうするのだろう。

● 民営化するといっても、新たな会社に経営を任せるのではなく、今の組織が民営化するのが現実的だろうね。

■ むしろ、公営企業を株式会社にする手続きには興味がある。そういうコンサルティングも我々のサービスメニューに加えたいね。

▲ そのワンステップとして、傘下に持っている公社を民間会社に転換するような形も考えられるかなと思う。いろいろ、模索の動きは出ているし、意見を求められることも増えてきましたしね。

■ 市場化テスト法の特定公共サービスに位置づける場合であれ、事業の根拠法自体を変える場合であれ、現行法の問題点や障害となる点は何かを明らかにすることが必要だね。都市計画の都市施設、接続の義務、下水道法に基づく監督処分や罰則など、いろいろありそうだ。次回はこれについて論じてみましょう。皆さんお疲れ様でした。

【トピックス: 覆面座談会(第二弾):民営化を進めるための障害とは に続く】       


■その後の動向(08/12/15追加)

 平成19年12月に改定された「公共サービス改革基本方針(別表)」(官民競争入札等監理委員会)に盛り込まれた公物管理関連業務の内容のうち、上下水道事業に関係するものと現在までに講じられた措置は次のとおりです。

事項 措置の内容等 講じられた措置
水道施設の維持管理業務  水道法に基づき水道事業者等である地方公共団体が実施する水道施設の維持管理業務について、包括的な民間委託が円滑かつ適切に推進されるよう、平成19年度中に以下の措置を講じる。
(1) 地方公共団体が保有する施設や人員構成の実情を反映した最適な業務実施体制を検討するための手引きを作成・公表する。
(2) 民間委託を活用するには、第三者委託等の包括的な民間委託のメリット、実施上の留意点等を踏まえ、その実施を検討すべきことを周知する。
 また、包括的な民間委託の実施に当たっては、より透明性・競争性の高い手法の活用を検討すべきこと、民間事業者の創意工夫をより活かすため、運転・維持管理やサービス水準の指標を用いて要求水準を設定する契約手法が可能であることを周知する。
(3) 第三者委託等の包括的な民間委託が円滑に行えるよう、第三者委託の手引きを作成・公表する。
(1)民間活用を含む水道事業の連携形態に係る比較検討の手引き(H20.6)
(2)第三者委託の実施の手引きの送付について(H19.11.8付通達)
(3)第三者委託実施の手引き(H19.11)
工業用水道施設の維持管理業務  工業用水道事業法に基づき地方公共団体が実施する工業用水道施設の維持管理業務について、包括的な民間委託が円滑かつ適切に推進されるよう、平成19年度中に以下の措置を講じる。
(1) 地方公共団体に対し、民間事業者に委託することが可能な業務の範囲について制限はないこと及び包括的な民間委託が実施可能であることを周知するとともに、その実施に当たっては、透明性・競争性が高く、より民間事業者の創意工夫が活かされる手法の活用を検討すべきことについて周知する(平成19年度)。
(2) 地方公共団体の技術力の維持向上及び民間委託を実施した際の官民間の責任分担の明確化に資するため、引き続き工業用水道施設の運転、維持管理に関するマニュアルの作成事例の収集、取りまとめを進め、その一般的モデルを作成し公表する。
(3) 従来から取り組んでいる包括的な民間委託等に係る事例紹介について、その事例に係る具体的メリット、実施上の留意点及び要求仕様書の内容に重点を置いて取りまとめ、平成19年度中を目途に、地方公共団体に周知し公表する。
(1)「公共サービス改革基本方針」の改定について(H20.3.31付通達)
(2)工業用水道事業に係る運転管理マニュアル一般的モデル(H20.3)
(3)包括的な民間委託等に係る事例紹介(H20.3)
下水道関連施設の維持管理業務  下水道法に基づき地方公共団体が実施する下水道施設の維持管理業務について、包括的な民間委託が円滑かつ適切に推進されるよう、以下の措置を講じる。
(1) 地方公共団体に対し、下水処理場等の包括的な民間委託の実施の必要性について改めて周知するとともに、その実施に当たっては、より透明性・競争性を高め、民間事業者の創意工夫を活かす観点から、下水道の維持管理サービスに係る業務指標(PI)を用いて要求水準を設定する契約手法が可能であることを周知する。(平成19年度)
(2) 管路施設の維持管理業務について、民間の創意工夫を活用した包括的な民間委託のあり方に関する検討会を設け、平成20年度中に結論を得て公表する。
(3) 下水処理場等における包括的な民間委託等の先行事例を調査し、その具体的メリット、実施上の留意点等について、平成20年度中を目途に地方公共団体に周知し公表する。 
(1)「公共サービス改革基本方針」の改定について(H20.2.29付通達)
(2)国交省と日本下水道協会で調査・検討中
(3)包括的民間委託等実施運営マニュアル(H20.5)

 また、上下水道事業に関してこれまでに実施された市場化テストの実施状況は下表のとおりです。このうち奥州市では、実際に市場化テストが行われていますが、これは市がモデル事業として選定したもので、民間から対象業務の提案を受けたものではありません。民間から市場化テストの対象業務の提案を募集し、採用になった例は大阪府水道の1件のみです。市場化テストに関する民間提案を受け付けている自治体の数自体が極めて少数にとどまっていることを含めて、この座談会で予想したとおり、民間にとってのハードルは極めて高いといえるでしょう。

自治体 対象業務 時期 摘要
奥州市 水道止水栓開閉栓業務 H20.1(入札) 市は予定価格を上回り失格。奥州市水道工事業協同組合が落札。(モデル事業として実施)
東京都 データエントリー、プリント業務 H19.6(民間提案非採用) 税、水道(収納)等の異動データの入力、プリント、封入、代行発送。
同上 広報・公聴業務 水道局の広報及び公聴に関することの企画立案から運営までの事業の実施。
大阪府 (民間資金を活用した)流域下水処理場の建設及び維持管理 H20.12(民間提案非採用) 産業投資ファンド法人によるREITを活用して民間が建設資金を調達し、府の起債を不要とする。建設後は施設をREITが購入し、長期継続契約により府にリースバックする。
駐車場の管理及び運営 大阪府水道サービス公社による駐車場の管理・運営を民間が実施。
浄水場等維持管理・ポンプ場等巡視点検
府営水道事業の民間資金を活用した包括的なアウトソーシング H20.12(民間提案採用) 公設民営(資金調達は民間)と指定管理者制度により、基幹業務を除いた包括的な運営を民間が実施。
水質検査(補助) H20.12(民間提案非採用) 大阪府水道サービス公社の廃止(予定)に伴う公社受託業務の民間委託化。
工業用水道事業の運営管理 府と民間で設立する事業運営会社に資産と事業権を移し、この会社が施設の改築更新を含めた事業の運営を行う。
水道施設管理・情報システム運用管理 大阪市水道局との情報システム共同利用を前提に、水道施設管理における地理情報システムの導入と情報運用管理の一括アウトソーシングサービスを実施。
      
トピックスに戻る